稲沢市議会議員 しちおう ブログ

不登校を経て、作業療法士として病院に勤務、現在は稲沢市議会議員として活動する「しちおう」のブログです。

空き家を生まないプロジェクト〜岡山県岡山市の空き家対策〜

稲沢市議会議員のしちおうです。
視察報告の第二弾は、岡山市の空き家対策です。

 

概要

岡山市では、2015年に国の方針に従い、空き家対策の推進に関する条例を制定しました。

この条例に基づき、そのまま放置すれば特定空き家等になる可能性がある空き家等の所有者に指導、勧告、命令を行なっています。

【特定空き家】

倒壊する恐れがあったり、ごみの放置や不法投棄など衛生上有害となる恐れがあったり、窓ガラスが割れたまま放置されるなど著しく景観を恐れたりする建物のこと。

 

背景には、岡山市の空き家率にあります。

住宅総数に対する空き家数の比率は14.5%と、全国平均の13%台と比べると少し高め(ちなみに、稲沢市の空き家率は11%台、正直行政が把握できていないだけで実態はもっと多いのではないか?という気もする…)

推移も2013年15.7%、2018年14.5%、2024年14.5%と直近10年で横ばいであるものの、今後増加することが予測されています。

幸いにも、2024年に行われた実態調査では、半数以上が「管理が行き届いており、目立った損傷はない」空き家であるため、空き家を再利用する取り組みを目標の一つに掲げています。

 

主な取り組み

具体的には、どんなことに取り組んでいるのでしょう。

① 助成制度


市独自でリフォーム助成金を設けています。国の助成金もありますが、条件が厳しいために制度の隙間を縫う形で独自の措置をしています(年15件ほどの利用で、予算に対する執行率は約8割。かけた金額に対して、1/3の補助率で上限50万円まで支払われるそう)

 

② 空き家情報バンク


市内に所在する空き家の賃貸や売買を促進するため、空き家に関する情報を市のホームページ等を通じて提供しています。


利用希望者は市の窓口を橋渡し役として、下見会等を行い、最終的な物件の契約等は宅建業者を通して行なっています。
今後、空き家の意向調査を行うことで「管理が行き届いており、目立った損傷はない物件」と「管理が行き届いていないが、危険な損傷はない物件」の利活用を計画しています。



【実績】

2021年:登録10件、成約8件、成約率80%

2022年:登録26件、成約19件、成約率73%

2023年:登録21件、成約7件、成約率33.3%

 

③ 空き家等管理活用支援法人の設立


弁護士等の専門職と連携して、ワンストップでの空き家全般に関する相談対応や空き家等の活用や管理、相続、登記を支援しています。

 

④ 空き家を生まないプロジェクト


空き家は相続や施設入所等を契機に発生することから、1965〜1984年代に開発された団地を含む町内会にアンケート調査、出前講座、個別相談会を行なっています。

 

所感

まず、観光業が盛んで、政令市でもある岡山市においても、空き家の問題が深刻であることと、これからもっと増えていくであろうということを重く受け止めました。

 

そのような中でも、岡山市は、空き家の現地調査、所有者の特定、意向調査を行いながら、空き家等の適切な管理の促進、除却、利活用促進、発生抑制に努めていました。

特に注目したのが、② 空き家情報バンクと④ 空き家を生まないプロジェクトです。

② 空き家情報バンクによって空き家等の情報発信を行い、市役所職員も同行する下見会を通じて安心して業者との契約を促していることが重要な点であると感じました。

成約率も高く、担当職員も話していた「放っておくよりも、動いた方が良い」に表れるように、年数と共に劣化し、状態が悪くなってしまう空き家において、早期対応に繋がっていました。

 

稲沢市も空き家情報バンクは持っていますが、サイトが見づらく、情報もユーザー目線ではないため、機能しているとは言いづらいです。

稲沢市でも、空き家情報バンクで下見会の実施をしたり、空き家情報バンクの登録が進むよう物件の調査(岡山市は地図作成業者のゼンリンが約3,000万円/半額国の助成金で入札して行なっている)、特に空き家発生が予測される団地等に事前に周知をする④ 空き家を生まないプロジェクトに準じた出前講座を行えないか、担当課に提案していきたいと思います。

 

稲沢市岡山市と比べて空き家率が低いものの、立地、開発可能性、空き家の状況的により深刻に捉えねばならない状況にあります。

私は初当選の時から空き家問題に取り組んでいて、医療従事者なのになぜ?と言われることもあるのですが、住宅建設可能区域が狭く、住宅ストックに制限があり、過疎化・高齢化が急速に進む地区がある稲沢市において、人の移り住みや地区の住環境含めた安全性の維持という点で避けては通れないことであると感じています。

 

実際に地域を歩くと、住民からの不安の声もよく頂くんですよね。

不動産の売買と繋がる空き家の利活用は、民間事業との兼ね合いがあるため、市役所が介入しづらいことは理解していますが、空き家はその町の住みやすさや安全性に直結する社会的な問題だと捉えて、積極的な介入が必要であると再認識しました。

 

以上で視察の報告を終わります。参加させて下さって、ありがとうございました!