稲沢市議会議員 しちおう ブログ

不登校を経て、作業療法士として病院に勤務、現在は稲沢市議会議員として活動する「しちおう」のブログです。

愛知県瀬戸市〜小中学校の統廃合によって誕生した市立小中一貫校「にじの丘学園」を視察しました〜

こんにちは、稲沢市議会議員のしちおうです。

先日、愛知県瀬戸市にある公立の小中一貫校「にじの丘学園」を視察しました。

概要

この学校は、5つの小学校と2つの中学校を一つにする大規模な統合によってできた学校です。

背景としては、少子化によって児童数が想定以上に減少し、小学校で6年間一度もクラス替えができない、中学校で部活動が成立しないなどの弊害が生じていたことから、PTAが改善を要求。それに応えるかたちで市役所、教育委員会、そして地域が一丸となって、改善要求から6年間という驚きの早さで開校に至りました。

小中一貫校の利点

固定化された人間関係で過ごすことには利点もありますが、人と関わるスキルが育ちにくいなどの欠点もあります。にじの丘学園では、小中一貫校の利点を生かして、地域や学年を超えた人間関係の創出に工夫しており、9年生(中学3年生)が1年生(小学1年生)の面倒をみるなどの関わりが生まれていました。

ふだんの掃除も学年を超えたグループで行い、子どもたちのコミュニケーションスキルや協調性の向上、優しさや思いやりの心の醸成に繋がっているようでした。

 以降、楕円の画像はHPより引用

建物にも工夫がされており、大階段には人が座って話したり、くつろいだりできるスペースが備え付けられ、廊下も「廊下」としての利用ではなく「交流スペース」としての利用ができるように幅広に設計されていました。また、関わりが生まれやすいように、旧校舎から移設した楽器がところどころに置かれていました。

小中一貫校の利点は他にもあり、小中学校の教員が連携して子どもを教えています。

中学校の教員が小学校の教員とともに授業に入り(乗り入れ授業と呼ばれている)、早くから専門的な知識が得られたり、小学校から中学校への円滑な移行をサポートしたりしています。

これまで各小学校で教育の習熟度に差がありましたが、9年間の長期的な学習計画とその積み上げにより、一定の水準を保ちやすくなったそうです。

なんと、職員室も小中一緒。職員会議や生徒指導なども共同で行なっています。

現在の児童生徒数は、約1,000人(小学校が1学年3~4学級で計689人、中学校が同2~4学級で計245人)

小学校卒業後に、これまでの小学校生活とは異なる新しい中学校での環境や生活スタイルなどになじめず、授業についていけなくなったり、不登校やいじめが起こったりする現象(中一ギャップ)の解消も期待されています。

開校までの苦労

もちろん、いいことばかりではなくて、開校に至るまでにたくさんの苦労があったそうです。

地元の学校がなくなる、ということはイコール地域の衰退に繋がるとの懸念から、反対意見もありました。そのため、各小学校区に委員会を設け、各学校の特色を整理したり、課題について話し合ったりするワークショップをたくさん行なったそうです。

市役所も教育委員会だけではなく、地域コミュニティに関わる部署やまちづくりに関わる部署が参加。合意形成に努めるうちに地域住民の「不安」が「理解」に変わり、そして「協力」に移っていきました。

(子どもに対しては、建設中の段階から合同遠足、部活動の合同練習を始めて、環境に慣れるように配慮した)

なお、この協議会は開校後も継続され、学校跡地の利用の仕方などを話し合うことでコミュニティの継続に繋げているそうです。

地域との繋がり

このような苦労もあり、にじの丘学園は地域に開かれた学校づくりにも取り組んでいました。

たとえば、学校に足を踏み入れて最初に見たのはピアノでした。なんと、登下校時に地域住民がボランティアで音楽演奏をしたり、本の読み聞かせや図書室の運営補助、家庭科授業の補助に入ったりしています。

また、土日祝日は、学校図書館を地域図書館として一般開放しており、瀬戸市立図書館の利用カードで貸出ができるようになっていました。

学校の統廃合は、稲沢市含めさまざまな市町村で取り沙汰されていますが、多くは財政難からその必要性を語られます。

瀬戸市は、より良い教育環境を目指して、保護者から声があがり、「瀬戸市で実現したい教育はこう、そのためには小中一貫校がいい、だから学校を統合しよう」という流れがあり、

「多様化、複雑化する社会の中で、一人では解決が困難な問題や課題に対し、多様な人々と意見を交わし、共に手を取り合い、力を合わせて納得解を導き出す力を育む」という教育理念に住民が共感できたから、開校できたのではないかと感じました。

 

また、地域との対話も重要視していて、反対意見に対しても何度も何度も丁寧に話し合いを重ね、「不安」が「理解」、そして「協力」に変わったというのが印象的でした。

校舎も他学年だけでなく地域の人が交わり、交流するという教育のコンセプトを体現しており、もともと反対していた人が完成した校舎を見て賛成意見に変わったというエピソードも頷けました。

 

事実、にじの丘学園が開校したことで近隣に開発された住宅が完売したそうで、質の高い教育はまちづくりにも生かされる、というぼくの持論を実践されていました。

稲沢市も公共施設の適正化、財政難の観点で学校の統廃合が語られることが多いですが、瀬戸市のように「子どもたちにより良い教育を提供するために必要な環境は何か?」から議論を始め、子ども、保護者、地域住民らと理想を形にしていくことが必要だと思います。

そして、それが教育だけに留まらず、移住者を増やすなどのまちづくりにも生かされるという実践を学ぶことができて、とても勉強になりました。

応対して下さった職員、教員のみなさん、ありがとうございました。

瀬戸市小中一貫校及び小中一貫教育について | 瀬戸市

進む少子化で7つの学校を統廃合 愛知の小中一貫校「にじの丘学園」が目指すのはー:中日新聞Web

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稲沢市議会議員 しち おう/志智 央
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