愛知県大府市に、全国で有数の認知症研究機関「国立長寿医療研究センター」があります。センターの副院長が稲沢市で講演されると聞いて、勉強会に参加してきました。
テーマは、前回の議会で取り上げた「認知症初期集中支援チーム」です。
・認知症初期集中支援チームとは
認知症の方が住む家を専門家が訪問。早期に発見、介入することで重症化を防ぐ。国は平成30年度までに各市町村に支援チームを置くよう勧めており、稲沢市は来年度開始に向けて、現在準備中だ。
当事者・関係者以外にとって、認知症はイメージの付きにくいものです。
自分には関係ない、あるいは、怖いものだと遠ざけてしまう。
今回は、先行して支援チームを立ち上げた自治体の例を通して、理解を深めます。
・ケース1:79歳女性
経緯。
夫と死別。一人息子は海外で暮らしている。
そのため、弟夫婦と同居していた時期があったが、仲違いした後に一人暮らしになる。
最近、心臓を手術し、退院後にヘルパーが派遣されていた。
しかし、段々と部屋の片付けができなくなったり、「部屋のものを盗られた」という妄想が出現したりした。ヘルパーなどの支援者に対しても「お金を盗った」などの反応が出て拒否的になったため、
「認知症の疑い」として、専門チームの派遣依頼が出た。
評価。
支援チームが自宅を訪問するが、口汚くののしられる。
入浴はしておらず、自身の体を清潔に保つことが自力では困難だった。
対応。
①弟夫婦に連絡 → 関係が悪かったが、緊急連絡先としてのみ関わってくれることになる。
②かかりつけ医に情報提供 → 服薬ができていなかったことが判明する。
③関係性を築いた後に、物忘れ外来(認知症の専門的な治療を行なう)を受診。
→MRIにて、脳血管性認知症と診断される。
④「一緒に掃除をする」ことで拒否が軽減。部屋を衛生的に保てるようになる。
⑤デイサービスを始め、入浴もできるようになる。
⑥配食サービス、訪問看護・ヘルパーの服薬管理などを導入し、生活を整える。
➡ 状態が改善!
本人も「私が出来ないのは病気のせいなのよね、何でもっと早く行かなかったのかな」と話すようになった。
支援チームの地道な介入が功を奏した例です。
この段階で介入できなければ、おそらく悪化していたでしょう。
続いては困難例。
・ケース2:87歳女性
経緯。
本人と夫の二人暮らし。
夫は人の意見を聞かず、支援者との間でトラブルが絶えない。
門前払いで家内まで入れない状態。
評価。
敢えてチーム(大人数)で訪れずに、少人数で訪問。
なんとか家内へ入るも、劣悪な環境…緑色の浴槽、万年床の下には害虫、そして、食べ物はテーブルに放置され異臭をはなっていた。
妻の状態を調べようとすると夫の表情が険しくなったため、次回の約束だけ取り付けて一端引く。
対応。
夫は妻が短時間でも自分の前からいなくなることが不安な様子。
チームとして介入することは困難と思われ、①かかりつけ医を決める。②支援者が継続して家を訪問し、関係を続ける。のみ行なう。
➡経過を見ていたところ、徐々にヘルパーの利用ができるようになり、妻の活動量も増加。そのことを夫も喜べるようになってきた。
最終的に良い方向へ進むものの、支援チームとしての介入が困難だった例です。
認知症初期集中支援チームは、地域包括支援センターだけでは支えきれないケースを担うことになります。おそらく、こういった困難事例を多く見ることになるでしょう。
初動が鍵。
現場にいると、両ケースに似た方を時々見ます。
いずれにせよ、本人たちだけでは悪化の一途を辿りますし、対応が遅れるほどに状況は深刻になります。しかし、事例を見て分かる通り、対応には専門的な知識や経験を要することは、明らか。支援チームが介入することで、彼らが認知症という病気を抱えながらも、より良く生きる方法を支えられると良いです。
誤解が無いようにしたいのは、認知症になりながらも楽しそうに、元気に生きている方はたくさん見えるということです。認知症を不幸な出来事にしないように、たとえ、認知症になったとしても大丈夫だと思える環境・仕組み作りが必要です。
今回の勉強会では、12月議会の討論で詰め切れなかった部分も学べました。
議会で一度触れただけで終わらずに、チーム発足後の経過と結果を引き続き見て、行政と共に改善のアイデアを探っていきます。
認知症施策は、まさに専門家としての腕の見せ所!
私が議員に選ばれた役目でもあるので、頑張ります。
しち おう/志智 央
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