アメリカを発端として、性被害の告発が相次いでいる。
SNSで#metoo（“私も”の意）を添えて、芸能人、一般人を問わず実体験を綴っている。
彼らが勇気を振り絞って出したSOSを、他人事と感じる人もいるかもしれない。
しかし、僕は友人から性被害の告白を何度かされたことがあり、
とても他人事には思えなかった。
日本でも国の要職にある者や、アイドルの行為をキッカケにして、被害の告白や連帯する動きが出てきているけど、ニュースでの取り扱い方には違和感を覚えることが多い。
その理由は、僕らの無関心と無理解にあると感じ、
今日は性被害にまつわる誤解と偏見について考えていく。
性被害にまつわる誤解
まず、当然だけど、被害の告白は容易ではない。
内閣府の調査でも62.6％の人が「どこ（だれ）にも相談しなかった」と回答している。
その理由は、「恥ずかしくてだれにも言えなかった」、「自分さえがまんすれば、このままやっていけると思った」、「そのことを思い出したくなかった」などがあり、
中には、あまりにも過酷な出来事を受け止めきれずに「なかったことにしよう」と否認し、それまでと同じように生活をし続けている人もいる。
僕に冗談めかして被害の告白をした人も、
決して傷付いていなかったわけではなく、そうでもしないと言えなかったのだろう。
加えて、性被害の加害者の8割は、実は顔見知りの犯行だ。
告発した後のトラブルを危惧して言えないケースも非常に多い。
性被害が事件化したケースでは、見知らぬ者の犯行が8割と実際の被害割合と逆転。
知っている人が加害者の場合は、それだけ被害を訴えにくいことを表している。
このような理由で被害が潜在化することによって、
無自覚な加害者（合意があったと思い込む、あるいは加害したことに気付いていない人）が生み出され、性被害を問題視しにくい社会になってしまったのだと思う。
僕らの中にある偏見
さらに深刻なのは、被害者が「自分に落ち度がある」と思い込んでしまう、あるいは周りの偏見によって「被害者に落ち度がある」と思い込ませてしまうことにある。
よく言われるのが、「誘うような姿をしていたのではないか？」だ。
事実はどうなのだろう？
ロシアで開かれたあるファッションショーに、
出演した女性がジーンズやトレーナーなどの普段着で現れた。
それは、性犯罪の被害者が当日に着ていた服を示した啓発のキャンペーンで、
僕らの偏見を取り払うものだった。
被害者の服は、華美なものではなく、私もあなたも着ている普通の服だった。
人はマイナスの出来事があった時に、無意識にその理由付けを行なう。
「こんな酷い被害に遭ったのだから、きっと被害者にも理由があるはず」といった具合に。性被害だけに限らず、いじめなどでも被害者側の落ち度を探してしまうのは、そういった心理が働いているからだ。
被害者に落ち度はない。
でも、たとえ、被害者に何らかの落ち度があったとしても、
責を一番に負うべきなのは加害者のはずだ。被害者ではない。
ここを誤ってはいけないと思う。
残念ながら被害者の傷を癒すことは僕らにできない。
しかし、無自覚な加害と、二次的な加害者になることを防ぐこと、
そして、被害を訴えにくいこの空気感を変えることはできると思う。
元厚生労働事務次官の村木厚子さんの言葉を借りるなら、「傷ついた人たちが泳いでいく水の温度を1度でも上げたい。それは普通の市民にもできる」。その水の温度を上げる役割を、ほんの少しだけでも自分自身が担いたい。
【参考資料】
・村木厚子さんの記事：「私はずっと誰にも言えなかった」 元厚労事務次官の村木厚子さんが語る、性暴力の被害
・警視庁の資料：講演資料 「あなたは悪くない」と言ってあげられますか。｜ 犯罪被害者等施策講演会 （“性暴力にまつわる誤解”の項P10〜13は特に参考になります）
・警視庁の被害者支援のページ：性犯罪被害にあったら！ 警視庁
しち おう/志智 央
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